新鮮が一番!?
採れたての野菜、搾りたての牛乳、揚げたての天ぷら・・・勝手によだれがでてきそう。
一方で、熟した果物、寝かせたワイン、・・・時間をかけるからこそ美味しくなるものもある。
最近は、鮮度保持ボトルが醤油の販売個数の3割を占めるそうです。とすると、やはり新鮮なものがおいしいのかもしれない…
でも、果たして本当にそうなのでしょうか?
私たちは醤油が最高に美味しい状態で、使えているのだろうか。
新鮮な醤油ってなんだろう?
鮮度がよければ美味しいのだろうか?
日々の料理に欠かせない調味料だからこそ、新鮮な醤油について検証してみます。

そもそも新鮮な醤油とは?
まず、そもそもの新鮮な状態の醤油の色について見ていきます。
みなさん、醤油の色と言えば、何色をイメージするでしょうか?
茶色という人が多いでしょうか。私もそう思っていました。
しかし、以前CMで「醤油は赤色が新鮮」というキャッチコピーを耳にしたことがあり、赤い醤油がおいしいのか?と疑問に思っていました。
製造工程の経過を見ながら検証してみましょう。
こちら、諸味(もろみ)の写真です。1年経過すると馴染みのある色になっていますね。

そして搾ってみると・・・


写真では少しわかりにくいかもしれませんが、ちょっと赤っぽいです。そう、搾りたては赤褐色なのです。(濃い口醤油の場合)
しかし、醤油の種類によって搾りたての色は異なるようです。

再仕込み醤油や、溜まり醤油は、かなり濃い黒っぽい色です。
色がつく仕組み
なぜ色が付くか、その仕組みはこうです。
『醤油の色の正体は、ブドウ糖などの糖分とアミノ酸やペプチドが、醸造している間や、醤油に高い熱を加えたときに反応してできる「メラノイジン」という褐色色素です。この反応をアミノカルボニル反応といいます。』(しょうゆの不思議より)
アミノカルボニル反応はメイラード反応とも言われ、パンの香ばしい焼き色、コーヒー豆の茶色、サンマの皮がパリパリの焦げ目なんかも、同様の反応でキツネ色や茶色となります。
食材に含まれる糖分とタンパク質とが結合して起こるので、私たちは日々このアミノカルボニル反応のおかげで美味しい食事ができています。
ちなみに、搾りたての醤油は少し辛いこともあるようで「塩慣れ」という言葉を教えてもらいました。成分を調べると、塩分も何も変化していないようなのですが、時間の経過とともに、塩慣れしてまろやかになるそうです。なんだか不思議ですね。
味が落ち着くという表現があるように、目に見えない作用が働いて調和がとれていくのでしょうか。生産者としては、味がなじんだ一番美味しい状態で食卓に届くようにしているようです。

新鮮が美味しい?熟成したら美味しくなる?
ここまで、新鮮な状態の醤油がどんなものであるかを見てきました。
では、果たしてその新鮮な状態が、醤油にとってのベストなのでしょうか?熟成しておけば置くほど美味しくなるのでしょうか?
答えは、新鮮な状態が美味しいです。ワインのように、時間が経てばたつほど熟成して美味しく変化することはありません。理由は、火入れした段階で、菌が死んでしまい発酵が止まるからです。(もちろん、個人の味覚は人それぞれ。どう感じるかは自分の感覚次第ですが)
その美味しい醤油は、食卓で使用していく間に、変化していくのでしょうか?
主に考えられる変化としては“酸化”です。醤油が熱や空気に触れると、酸化が進んでいきます。色が黒っぽくなっていきます。
最初に醤油の色のイメージを聞きましたが、赤褐色というよりは濃い茶色のイメージがあるということは、恐らく私たちが使っている醤油は少なからず酸化しているかもしれません。酸化すると元には戻らないので、なるべく酸化しないような対策が必要です。
基本的に、醤油は腐らないと言われます。劣化するとしたらそれは酸化によるものでしょう。
でも、新鮮な醤油と酸化した醤油の色の違い、わかるんだろうか・・・
それが分かるんです。
簡単な判別方法としては、今使っている醤油がなくなる前に新しい醤油をかって、小皿に垂らしてみて色や味を比べてみる方法があります。日頃、醤油の味を比べる機会はなかなかありません。ぜひ醤油がなくなりかけたらお試しください。

https://www.ssnp.co.jp/news/seasoning/2018/03/2018-0319-1436-14.html